今回から始まったこの「ボンズの屋台ボネ」。記念すべき第一回目は、2004年4月1日から放送を開始した『絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク』の森邦宏監督のインタビューです。
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PROFILE
森 邦宏(もり くにひろ)
アニメーション演出家。サンライズ時代に『機動戦士ガンダム 0083』(91)の制作進行として参加。これまでの作品に『新機動戦記ガンダムW』(95)、『カウボーイビバップ』(98)、『ブレンパワード』(98)、『∀ガンダム』(99)、『機巧奇傅ヒヲウ戦記』(00)、『オーバーマン キングゲイナー』(02)(すべて絵コンテ・演出)、『機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ラスト・リゾート』(99)(共同監督)などがある。
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-- 4月1日からテレビ東京系にて放送がスタートした『絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク(以下 絢爛舞踏祭)』ですが、森監督がこの作品に関わるきっかけとなったのは、どのような経緯からなのでしょうか。
森邦宏監督(以下、森) 最初はプロデューサーの南さん、キャラクターデザイン・アニメーションディレクターの逢坂さんからのお誘いでした。南さんと逢坂さんとはサンライズの『機動戦士ガンダム0083』の制作の頃からお仕事の付き合いがありまして、これまで『機動武闘伝Gガンダム』、『カウボーイビバップ』、『機巧奇傅ヒヲウ戦記』などの作品でご一緒させていただき、今回この『絢爛舞踏祭』の監督として名前を挙げて頂きました。
-- 森監督としてはテレビシリーズ初監督作品となるわけですね。
森 そうですね。制作の時は各話進行、演出の時も各話演出だったので、今回のようにテレビシリーズ一本を通して見るというのは初めてです。これまでとはまた違う仕事ということで、探りながらやってます。
-- 最初の段階ではどのような作品だと聞いていましたか?
森 もともとはゲームの企画があり、それに連動して『絢爛舞踏祭』のロボットもののアニメーションの企画がある、ということでした。
-- 海洋もののロボット作品と言って良いんでしょうか。これまでのアニメで海中を舞台としたロボット作品というのは今までにない設定ですよね。
森 いろいろな作品ですでに地上も宇宙もやり尽くしてしまっている感があります。今回は水の中で、しかも火星が舞台ですので新しい見せ方ができるのではと思っています。
-- 水中の表現で苦労する部分というのはありますか?
森 いつまでも消えないあぶくが(笑)。水中でぐるんぐるんと動き回って、ロボットがあぶくを引っ張りながらのアクションがあるので、そこは難しいところですね。従来の作品では、水中だとメカがゆっくりした動きになるものが多いのですが、『絢爛舞踏祭』に登場する水中用人型ロボットのラウンドバックラー、「士翼号」と「希望号」は水の中でも機敏に動き回れる軽快なメカというように見せています。
-- ゲームの企画段階でキャラクターやメカというのは決まっていたのでしょうか。
森 僕が参加した段階でデザインとしては、潜水艦とゲーム用のキャラクターがある程度ありました。
-- それを参考に、アニメ作品として内容を膨らませていったという感じですか。
森 ゲーム用のキャラクター設定としてはかなりの点数がありましたので、アニメーションではどんな物語が広がるのか、どのキャラがドラマに絡みやすいだろうか、ということでキャラクターをチョイスさせてもらいました。さらに逢坂さんとは、アニメならではのアレンジしていくという作業をしていきました。世界観とキャラクターに関しては、アレンジがけっこう大きいと思います。
-- ではアニメだけに登場するキャラクターもいるんですね。
森 はい。主人公のグラムをはじめ、ヒロインのベス、ライバルの海賊のキュベルネスなどがそうです。
-- 主人公のグラムは20歳のフリーターという設定で、そこが今の時代を象徴していて面白いなと思ったんですが。
森 ゲームで言うプレイヤーという立場、つまりなるべく白紙の状態の主人公にしたかったんです。ちょっとした過去はもちろんあるんですけど、あまり染まっていない感じですね。フリーターという設定はチーフライターの浅川(美也)さんのほうで最初の段階で出ていました。これから染まっていくキャラクターとことでフリーターという設定が生まれたのだと思います。そのかわり主人公が共にする「夜明けの船」のメンツはそれぞれの役割がもうがっちり決まって出てきます。そこに視聴者目線の主人公が放り込まれるということですね。
-- 主人公はその「夜明けの船」でいろんな人に出会いながら色んなものを吸収していくと。
森 そうです。フリーターとしていままで一人で生計を立てていた若者が、様々なキャラクターが集まっている海賊グループに参加して、何かを見つけていく物語になります。
-- 一番気になるキャラはイルカのポイポイダーなんですが(笑)。
森 そうでしょうけど、あんまりそういう風にみて欲しくないですね。彼も猫のクララも、ボールズのグランパも、普通の人間と一緒に当たり前のように生活していますので、ポイポイダーだけをあんまり特別視しないように(笑)。とはいえ彼の活躍する回も作ったりして。6話ぐらいまで見ていただくと、意外な活躍もしますよ。
-- ボンズ作品ということで、特別意識したことはありますか?
森 作品のクオリティが確かな会社だということは以前から感じていました。ですのでアクションを楽しめるアニメーションという原点を思い出せるのではないかと思っています。今はロボットアニメが少し元気がなくなってきていると思うので、この『絢爛舞踏祭』で元気を取り戻せるかなという思いはあります。
-- 最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
森 一回見ると最後まで見逃せないような一話一話の仕上がりになっておりますので、惹き付けられてしまった人は全部観て、さらにDVDも全部買って、見事にはまってください。
(4/1 ボンズ Bスタジオにて)
次回は『絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク』を制作しているボンズBスタジオの紹介です!
(取材・文 浅山祐介)
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