こんばんは、ボンズ制作のカサオカです。
レギュラーコーナーとなりつつある、スタッフインタビューその3をお届けいたします。
今回は、編集をご担当下さっている、JAY FILMの坂本久美子さんです。
アニメの編集とはどう言うものなのか中々分からないものですが、その辺りの事を中心にお話を伺いました。
【亡念のザムド】スタッフインタビュー03
編集:坂本久美子
:イラスト 宮地昌幸
―― すでに数話分の編集作業を終えられているのですが、ご感想はいかがですか?
坂本 いやぁ、私は一言で言って単純に面白いですけど。・・・・・・はい、面白いです。
―― どの辺りが面白いですか?
坂本 なんだろう・・・・・・。世界観とかも私好きで・・・・・・宮地さんが持っているもの、好きなものがムチャクチャ反映されてると思うんですけど。その面白みもあるし、登場人物も皆魅力的だし・・・・・・なんて言ったら良いんですかね・・・・・・
―― なんか今、物凄く言葉を選ばれてますね(笑)
坂本 ええ、それはもう・・・・・・
―― では、質問変えましょうか
坂本 はい
―― 宮地さんどんな監督ですか?
坂本 えー、宮地さんですか?宮地さん、面白いですよねー。
宮地さんは、今まで自分がやらせていただいてきた監督さんの中でも、良い意味で面白い部類に入る感じ(笑)
―― いや、面白いって色々ありますよね?(笑)
坂本 ありますあります。あの、そもそも一番最初にお仕事した時って、私は助手で、宮地さんも一演出としてって言う感じだったんですけど。
―― ご一緒された最初の作品を教えてください。
坂本 多分一番最初にお会いしてお仕事したのは、キングゲイナーで・・・・・・その後が絢爛(*1)になるんですけど。キングゲイナーの二話が宮地さんの担当話数で、その時お会いしたのが最初ですね。
キングゲイナーって、次回予告を担当の演出さんと私で作ってたんですよね。私にとっても凄く良い機会だったし、直接演出さんと仕事できるとかって、助手の時にはあまりないじゃないですか。宮地さんもよくおっしゃってくれるんですが、私もそれがすごく楽しくて。また、多分エディターじゃなくて私がやることで、演出さんも色々試したりできたのかなあなんて、今は思いますけど。宮地さんとも、「これだ!!」って言いながらやってた気がします。楽しみながらやらせてもらったなぁ、っていうのがずっとあって・・・・・・
*1 絢爛 = 絢爛舞踏祭。2004年放送のテレビアニメ
―― それが宮地さんとの出会いであると
坂本 そうですねー。
―― 結局、何がどう面白いのかって言うのが出てないですが(笑)
坂本 ああ、そっか。
人としては、あんまり臆さない印象があって。物事をはっきり言うし。凄くパワフルだけど、でも多分繊細でもあって、そういうとこが面白いなあと思います。
後は、センスが独特なところというか。
―― 独特ですね
坂本 独特ですよねぇ?それが上手く口で説明できないんですけど。
―― 確かに、映像を見ていただかないと言葉では上手く伝えられない所はありますよね
坂本 台詞選びとか・・・・・・
―― 間の取り方とか
坂本 そうなんだよね。作品に流れる不可思議な空気とか。ほんと口で上手く説明できないのが悔しいんですけど。それが上手くフィルムに表れてたらいいなぁ、と思って。
台詞とかも凄く好きで、毎話数毎話数好きなシーンとかたくさんあって、私はシナリオとか頂かないから読まないけど、コンテとか最初に頂いて見るじゃないですか。字面と絵面で見て、「あぁ面白いなぁ」と思っていて、実際頂いたフィルムを流して観て、「あぁなるほど、こうなってきたんだ。面白いな」とまた思ったりして。で、一緒に手を加えていって、更にその面白さが増したら嬉しいな、って感じですよね。
実際一緒にやってみて、やっぱり、宮地さんのこうしたい!っていうのが凄く良く分かるなあと思いました。それも面白かったです。なんか話が逸れちゃいましたけど・・・・・・
―― そもそも、アニメの編集さんってどんな事をするお仕事ですか?
坂本 私も、自分の会社とか自分の周りの方のやり方しか見たことがないので、こういうものだって断言できる物じゃないのかもしれないんですけど。
簡単に言えば、上がってきた線撮りや本撮といった声の入る前のフィルムを見て、台詞や間やアクションを繋いだり詰めたりして流れを作って、尚且つテレビシリーズだったら、定尺に収めるっていう作業です。でも、決まった尺の中でただ切るだけじゃなくって、もうちょっと伸ばした方がいいなって所は提案させてもらいます。
演出面に関しては、基本的には演出さんや監督さんがメインにやる部分だと思ってるんですけど、なんだろな、客観的に作品の事を見られるのは編集だと思うんですよ。フィルムを一番最初に見れるわけだから、一番最初のお客さんみたいな。だから率直な感想とかを言えると思うんですよね、このカットもっと見たいです、とか。
意見を交わす中で新しい発見があったりもするし、それでもっと作品が面白くなったらそんな嬉しい事はないと思うから、そういうことをする場が編集なのかなあと思います。
―― ・・・・・・コメントが硬いですね(笑)
坂本 そりゃ硬いよ!(笑)
―― いやぁ、凄い考えてコメントされてるなぁ、と思って聞いてました。
坂本 考えてるよぉ!
―― それなので、余計な茶々入れられない感じで(笑)
坂本 いやいやいや、入れてもらっていいのに(笑)
―― それが編集の仕事である、と
坂本 そうだねー。もしかしたらアニメーションの編集は、言われた通りに切ったりとか伸ばしたりとかするだけで成り立つのかも知れないんですけど、演出さんとか監督さんが「コレで良いんだ!」って思っているものを、客観的に見て判断する人は必要だと思うんですよ。
もちろん作品の世界観であるとか、演出さんや作画さんが芝居を付けてくれて出てきたフィルムの長所を殺すのは良くないと思うんですけど。でも、「凄く良いもの作ってきました。コレ全部使ってよ、凄く面白いよ」って渡されたフィルムが、ホントは20分というフォーマットが決まっている作品なのに23分あったとしますよね。3分どうしても切らなきゃいけないって時に、やっぱり実際作ってる人って客観的に見れないこともあると思うんですよね。
アニメだけじゃなくて実写もそうだと思うんですけど。必要だと思うから撮ってるわけだし、「これ撮るの大変だったなあ」と思うとまた切れなかったり。
―― それを客観的な視線で調整する役目の人が必要であると
坂本 そうですね。整理するというか。
―― それが、編集さんであると
坂本 と、思いますけどね。
―― 坂本さん、アニメの他に実写の編集もされることはありますか?
坂本 実写は、劇場作品とかはやってないんですけど、テレビは何本かやらせていただいて・・・・・・
―― アニメと実写の違いってありますか?
坂本 一番大きな違いは、実写の場合は素材があること。声も動きもある画が目の前にあって、且つそれを選ぶことができるんです。だけど、アニメの場合はその為にカットを「描く」から、基本的に余計なもの(テイク違いやNGカット)がない。最初からカット割りは決まってるし、1カットに使う尺って言うのもおおよそ決まってる。だから、編集のバリエーションてほとんどない。でも実写だと、繋ぎ方が何通りもあるんです。どのカットをどれだけ使うか、人物をカットインするタイミングとか、色んなタイミングをこちらでも選べるんですよ。この良い顔をこっちでは使えなかったけど、ここで使えるとか。
選択肢が多い分、自分達が提案できる形が、実写の方が多いなあとは思いますけど。だからってアニメがつまらないとか言うのは全くなくって。
―― 逆に、実写よりもアニメのほうが面白いって言うのは、どこかありますか?
坂本 想像できるのは楽しいですね。動きや芝居を想像するの。大抵アニメーションは編集の後に声を入れて頂く事が多いので、セリフや音が入ったものを観て、良い意味で裏切られたりするのもすごく楽しみなんですけど。
―― アニメの場合は、自分の作ったフィルムの間に合わせて芝居が入ったり音が入ったりと言う先行作業であると
坂本 そうですね。なので、そういう意味ではカットは選べないけど、決まった割りや有るものの中で、どれだけ面白くできるかっていうところが面白いなって思う部分もありますけど。
―― なるほど。ちょっと、軽めの質問をよろしいですか?ザムドのキャラでお気に入りは?
坂本 私みんな好きなんですけど・・・・・・
―― 駄目ですよ、一人選んでくださいね(笑)
坂本 なんだろう、今の所は伊舟かなぁ。
―― どんなところが好きですか?
坂本 いやぁ、多分、格好良い同性だからかな。同世代とまでは言いませんけど、リアルな感じで。
―― 伊舟の方が、何歳か年上だと思いますよ
坂本 ほんと!?
―― 確か、○○歳・・・・・・
坂本 そんな上なの!?
―― ですよ。でもまぁ、この辺りの話はカットしときましょう(笑)
坂本 そうですね(笑)
(しばし年齢の話が続く)
坂本 私、伊舟とユンボの喧嘩の所とか、凄い好きなんですよね。伊舟の台詞とかも好きです。男前だし、けど女らしさもあるし。同性の目から見ても、良いキャラですよね。あと、実は垣巣も好きなんですけど。
(色々裏話をはさんで・・・・・・)
―― ・・・そろそろ締めましょうか。編集さんの立場で、ザムドのこういうところを見て欲しいって言うのはありますか?
坂本 そうですねぇ。私は・・・・・・。何か、いざ言われるとかしこまっちゃいますね(笑)
―― いや、ソフトにお願いします(笑)
坂本 もちろん全部見て欲しいです。んー、アクションとかだけじゃなくて、アクションも凄いカッコいいんですけど、敢えて芝居場の・・・・・・ごめん、上手く言えないなぁ。
―― いや、まだ何をおっしゃりたいのかが・・・(笑)
坂本 わかんないよね(笑)えー、ユーモア溢れる会話とか、テンポ、作品全体に漂う空気とか、私だけじゃなく宮地さんの間とか、そういうのを面白いなって思ってもらえれば。ドラマを見ているような気持ちにいつもなるので、そういう風に思ってもらえたら面白いんじゃないかなあ、と。独特な笑いのセンスをご堪能ください。
―― 有難う御座います。JAY-FILM編集の坂本さんでした。
坂本 うーー、ぜんぜん言えてなーい!
―― 言えてなかったっすね(笑)
2008/05/02 JAY FILMにて