---- ファンの反響というのはいかがでしょうか。この『鋼の錬金術師』という作品は、もともとの原作のファンがいらっしゃって、さらにアニメで初めて知ったファンの方がいると思うんですが。
水島 非常に賛否両論な感じです。視聴環境が非常に良いということもあって、作品としてはすごく見ていただけてるなと思います。今まで自分が関わったどの作品よりも反響は大きいですね。原作ファンの反響で言えば、「原作をうまくアレンジしている」と言って頂いているという方もいらっしゃいますけど、「原作を変えすぎだ」という声も多いです。お気に入りのシーンが再現していないとか、シチュエーションを変えているということに対して抵抗感があるようで、そういう意見もかなりありますよ。でも、そういった意見は原作ものだと当然出る部分だと思います。
----それまでに思い描いていた個人のイメージを崩さずに映像化するのは難しいですもんね。
水島 でも、逆にこれまでに原作を読んだことの無い方が、アニメを観てコミックを買ってくださっている方もいるみたいですので、そういう繋がりは非常に良いことだと思います。
---- アニメがヒットすることで、原作コミックに限らず、他メディア展開の可能性も増えますよね。
水島 いろんなメディアでファンの子たちが楽しめるものが増えるのは良いことだと思うんですよ。そういう意味でも作品の間口が広がってよかったんじゃないかなと思いますけどね。コレも『鋼』だよと言うことで、楽しんでもらえたらいいなあと。
---- プレイステーション2やゲームボーイアドバンスではゲームも発売されていますが、アニメ制作サイドとしてはどこまで関わっているのですか?
水島 PS2の『鋼の錬金術師 飛べない天使』に関してはアニメの本編を作る前にアニメパートを制作しました。南さんが「ゲームからやると現場も慣れて良いだろう。だからゲームからやるから」と。ゲームのアニメパートを作りながらアニメの準備をして、現場的にはそのままアニメ作品の方に移行しました。新作の『鋼の錬金術師2 赤きエリクシルの悪魔』に関しては、アニメの制作の方がクライマックスに差し掛かっている段階だったので、さすがに同時進行ではできず、ボンズきってのおもしろ監督、増井壮一さん(アニメでは22話、25話、30話の絵コンテを担当)に監督をお願いしています。僕が作っている『鋼』とはちょっと違うところもあるんですけど、これがまた増井ワールドで良いんです。自分と同じテイストだったら別の人がやる理由はないし、せっかく今回増井さんが監督として立ってくれているのだから、増井味でいいじゃんっていうことで、面白いものがいろいろ上がっていますね。僕じゃあ絶対こうやらないっていうのが出ているんで、とても良いなあと思います。
---- それでは、新作のゲームではまた新しい『鋼』が見れるという。
水島 ストーリーはテレビからの流れのではないし、ゲームはゲームでオリジナルの雰囲気を持っているんですよ。ゲームの制作を担当しているラクジンという会社のディレクターも自分なりの想いを持っているし、きちっと一つの作品としてまとめられる人たちです。今のところ僕がゲームのコンテを読んでいる限りでは、ああ、増井『鋼』だ、増井エドだ、増井アルだっていう感じ。テレビの中でキャラクターがころころ変わっちゃうのはあんまり良いコトじゃないと思うので、ちゃんと決めてきますけど、原作から生まれたゲームならではの世界観なので、求められるものとかも違うし逆にアニメのままだといけないんですよね。ゲームではくだらないギャグを書いてたりして、俺だったらこんなところにこんなくだらないギャグ入れられないよって思いながら(笑)、ニヤニヤしながらコンテを読んでます。